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アクション100case.003

 

持続可能な農業を目指しつつ、手間をかけて丁寧につくる農家
茄子農家
島・しまファーム

アクション100case.003は、岡崎市と額田郡幸田町で茄子農家を営んでいる「島・しまファーム」さんをご紹介します。
 

ハウス栽培の茄子「とげなし美茄子(びーなす)」

「島・しまファーム」さんは、代表の村田真吾さんを筆頭に、奥様とパートさん3名とで運営される茄子農家です。
 
多くは、ハウス栽培による「とげなし美茄子」※を栽培・出荷しており、8月下旬~9月に苗を定植し、その年の10月~翌6月まで収穫をする、というサイクルで日々茄子づくりに励んでおられます。
 
※「とげなし美茄子」はJAあいち経済連からの登録商標です。

味わい深い木製建具と暖簾が目印。

島・しまファーム代表の村田真吾さん

7つのハウスが並ぶ。島・しまファームでは茄子のハウス栽培が多くを占めているが、夏の間は露地栽培も行っている。

7つのハウスが並ぶ。島・しまファームでは茄子のハウス栽培が多くを占めているが、夏の間は露地栽培も行っている。
写真提供:島・しまファーム

茄子

とげなし美茄子(品種:とげなし輝楽)の特徴は次の通り。
・艶が良い
・皮はしっかり、身はふんわり
・日持ちがする(収穫して5~6日は高い水分量を保ち、美味しく食べられます)
・ヘタにとげがない
・加熱して食べると美味しい

茄子

光沢の強い、深い紫色の皮が印象的

村田さんに、お薦めのお料理方法をお伺いしたところ、やはり加熱料理に向いているとのことで、シンプルにオリーブオイルで焼くだけの茄子ステーキや、麻婆茄子、グラタン、お味噌汁なども美味しいと教えていただきました。和食洋食中華、何にでも合って調理しやすいのだそうです。

茄子と季節野菜の和え物

煮込み料理やミートソースとの相性が良いのだそう。写真は、村田さんの食卓にあがった茄子料理。たけのこ入り麻婆茄子(左上)、茄子のミートソースグラタン(右上)、茄子と季節野菜の和え物(下)。
写真提供:島・しまファーム

サラリーマンからの転職

村田さんは茄子づくりを始めて今年で6年目。
 
以前は、飲食店のサービス業に20年弱携わっていました。
東京都心のレストランの責任者を歴任し、業績を回復させ、仕事は順調。
 
一方で、朝早くから家を出て、夜の帰宅は日をまたぐ、忙しい毎日。
 
 
そんな中、東日本大震災が起き、村田さんはご家族で東京から屋久島に移住します。
 
知人の誘いで、屋久島のリゾートホテルのマネージャーを務めながら3年を過ごしましたが、忙しさは変わらず、家族との時間も犠牲にする日々に疑問を持ち始めたと言います。
 
 
 
「あと20年、このまま続けていけるだろうか?」
 
 
 
悩んだ末、一番下のお子様がお生まれになるタイミングで、ご主人のお母様が住まう、ここ愛知県岡崎市に移住。農業大学校の案内を見つけた奥様の進言もあり、飲食業界から一転、農業を始めることにしました。
 
「主人は食べるものに関わる仕事の方がイキイキできると思いましたし、これまでのマネージメントの経験も生きるだろうと思い、農業を勧めました。」と奥様。
 
「ハウスって暑いんですよ。2月の中旬くらいに一度熱中症になりかけます。そうして汗をかく夏の身体になる。以前の職場環境では陽を浴びる時間は朝の出勤時だけでしたから、陽射しの強さなんてわかっていなかったですね。」と笑うご主人。
 
今は陽に焼けたお肌ですが、以前は真っ白の“もやしっ子”だったと仰います。
 
「面構えが変わりましたね(笑)。もともと優しい人ですが、家族と対峙できる時間や体力が生まれて、子どもたちの話をじっくり聞いたり、ゆっくり見守る余裕も生まれたようです。」と仰る奥様。
 
農作物は日々成長しており、待ったなしで、基本的に毎日働かねばなりません。それでも、笑顔の絶えない村田さんご夫妻が印象的です。

収穫コンテナを押しながら畑を見回る村田真吾さん。1日おきに収穫しながら、間に栽培管理業務を行っている

畑を見回る村田真吾さん。1日おきに収穫しながら、間に栽培管理業務を行っている

手間をかける

村田さんは、農薬をできる限り減らし、化成肥料も必要最低限にしたいと考えています。
 
そのためにこまめに畑を見て回り、重なっている葉があれば取り除いてまんべんなく光が当たるようにしたり、葉や実の健康状態をチェックしたり、実にしない花芽を早めに取り除いたり等の栽培管理をしています。
 
「人間と一緒で、木の健康状態が茄子の実に影響しますから、木そのものが元気でいられるように、細かく管理しています。茄子って美味しさを測る指標みたいなものがないんですよね。だから、市場に出荷した後は他の茄子と一緒になってしまってわからなくなるからあまり意味がないんじゃないか、と思われるかもしれませんが、自分自身が自信を持って出荷したいのでこだわってしまうんです。
 
私が美味しいと思えるものをつくりたい。
 
それが農家を長く続けるモチベーションになります。茄子が嫌いな子供が多いんですが、子どもの幼稚園に持っていくと、うちの茄子は美味しいと言って食べてくれるんですよ。」と顔をほころばせる。
 
島・しまファームでは、時折、発達障害の子どもたちの収穫体験に開放することもあるそうで、その子たちが安心して収穫できる環境も整えたいのだと村田さんは仰います。
 
手間をかけて自信を持って食べてもらえる茄子をつくることが村田さんの喜びであり、そうして届けた茄子を美味しいと思ってもらえることが、茄子の永続的な消費に繋がり、茄子農家の存続に繋がります。

茄子を診て回る村田さん。茄子たちを見る目が優しい。

茄子を診て回る村田さん。茄子たちを見る目が優しい。

「農薬が全て悪だとは思いません。消毒にも実に影響のあるものとないものがあり、また予防用のものと治療用のものがあります。まずは栽培管理で使う薬の量を減らし、安全を担保したうえで、最低限のところは頼りつつ、バランスをとりながら使っています」と村田さん。

茄子を診て回る村田さん。茄子たちを見る目が優しい。

葉に十分光が当たるように葉を間引き、茄子の花芽が混みあっているところは不要な花芽を切り、花が終わったらすぐに花びらを取り除く。茄子が大きくなりすぎると、等級が下がるだけでなく、木にも負担がかかるため、適正な大きさを見逃さず収穫することも、木を健全に保ちながら良い茄子をつくる秘訣。

茄子を診て回る村田さん。茄子たちを見る目が優しい。

畝にはビニール(=マルチ)が掛けられているが、通路はビニールの代わりに籾殻を敷いている。使用するビニール量を減らす意味もあるが、茄子は湿度のある環境を好むため、土壌から加湿する意味もあるのだそう。ただし、多湿になると病気のリスクは増えるため、細やかな栽培管理が必要となるのだとか。

持続可能な農業を目指してできること。

畝間の通路に、ビニールの代わりに籾殻を敷いたり、露地栽培の畑にはソルゴー(※)を植えて防風・バンカープランツとして利用したり、有機肥料に活用したりと、環境負荷の少ない農業に取り組む村田さんですが、夢があると言います。

※ソルゴー:イネ科の1年草。ナスと組み合わせて栽培することが多く、根をしっかり張るので防風に役立ち、ナスの害虫を食する益虫が好んで寄ってくるので、害虫対策に使われる。また、刈り込んだものは堆肥になる。

「やってみたいことはまだまだあります。
 
例えば、ハウスの暖房や換気などの電力に太陽光発電と蓄電池を使いたい。家庭用やメガソーラーへの助成金やメーカーの取組みは積極的に行われているのですが、農業となると力及ばずです。農業部門で使うエネルギーも多いですから、農家が発信する側になってエネルギー問題に取り組めたら嬉しいなぁと思います。
 
他にも、近くの竹林から生まれた竹チップを燃料にしてビニールハウスを暖房したり、水と二酸化炭素に分解されるマルチ(マルチ=畝に敷かれているビニール)を使ったり、苗を育てるビニールポットを100%分解されるものにしたり、と夢がある。でも、環境にやさしいものはまだまだ値段が高いので、全部をそうするわけにもいきません。
 
だから、自分たちの中で折り合いをつけて、できることから取り組んでいます。
 
そうして少しずつ、できることから取り組む人が増えれば、そのような商品の値段が下がったり、開発に取り組んでくれるメーカーが出てきたりして、変わっていくのではないかと思います。
 
まずはできることから始める。そして現状と想いを語り続けること。それが持続可能な農業に繋がると信じています。」
 
と、村田さん。

通路には、雑草を抑えるため、また土からの加湿を妨げないよう籾殻を敷いている。(写真左)ハウスは暖房の他にも、扇風機や温度を感知して自動で開閉する開口部、カーテンなど、電気に支えられている部分も多い。(写真右)

続けて、村田さんはこうも教えてくださいました。
 
「正直なところ、今、様々な物価が値上がりしています。重油、ビニール、肥料、等々。ですが、野菜の値段は上がっておらず、農家の経営状況は厳しくなっています。この地域でも
半分以上が70代の方々ですが、このままだとその方たちが農業を辞めてしまう可能性があります。そうすると、産地の存続が危うい。
新規就農者を育てていきたいけれど、この状況では厳しい局面もあります。
 
フォローアップ体制が充実しているとは言えないため、私たちが経験した収穫量や収支データなども可能な限り共有し、新規就農者が取り組みやすいよう力になっていきたい。
 
そして、生産者が少しでも増えてくれれば嬉しいです。」

クッキーは「菓子屋 ワタリドリ」の看板商品。

西三河では、茄子農家同士での情報交換会や勉強会、巡視などもあり、新規就農者が自然相手の仕事で生活ができるようなフォローアップ体制があるというが、村田さんはご自身の経験を基にさらに充実させたいと前向きです。
 
ハウス栽培の茄子は、西三河の特産品です。私たち消費者も一緒になって、この地域の産業を守り続けていきたいですね。

(文・写真:松尾 絵美子)

 
 
島・しまファーム
 
愛知県岡崎市内、額田郡幸田町内
島・しまファームさんの日々

★島・しまファームさんの茄子は、ほぼ毎日カフェのメニューにも時々登場します!

《取材後記》

光沢の強い、深い紫色の皮が印象的

取材当日、村田さんに茄子を少し分けていただきました。

光沢の強い、深い紫色の皮が印象的

私はボロネーゼパスタでいただいたのですが、ふわっとした触感と優しい甘みのある果肉、ハリッとした(でも硬くはない)皮が美味しくて、パクパク食べてしまいました。

光沢の強い、深い紫色の皮が印象的

茄子ステーキは、白ワインと一緒に・・・。
 
皆様も、とげなし美茄子をお見かけした際にはぜひお試しください!

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