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アクション100case.002

 

厳選した材料と向き合い一つ一つ丁寧に作るお店
菓子屋ワタリドリ

アクション100case.002は、植物由来の材料でお菓子を作られている、額田郡幸田町の「菓子屋 ワタリドリ」さんをご紹介します。

 

美味しいと思うものを使い、美味しいお菓子をつくりたい。

「菓子屋 ワタリドリ」は、ご夫婦で営まれている小さなお菓子屋さんです。
通りに面した2階建てビルの1階にテナントとして入っており、控え目な佇まい。
低く構えた引き戸をそっと開けると、丁寧に並べられたクッキーや生菓子が出迎えてくれます。

味わい深い木製建具と暖簾が目印。

味わい深い木製建具と暖簾が目印。

シンプルですっきりとした店内。

シンプルですっきりとした店内。

ショーケースに並ぶ焼き菓子。

ショーケースに並ぶ焼き菓子。

定番商品と旬の食材を使った商品があり、品数もその日毎に変わります。
 
この日はクッキー18種類、生菓子4種類、朝焼きケーキ、生チョコ、クッキー缶、グラノーラがずらりと並んでおり、どれも形や素材が様々で、思わず目移りする楽しさ。

この日のメニューは、
・木村農園さんの金時生姜と国産ハチミツのクッキー
・有機ココアと有機オレンジピールのクッキー
・有機レモンピールと有機ココナッツのクッキー
・栗と有機アーモンドのクッキー
・有機ほうじ茶のクッキー
・波照間島黒糖と有機くるみのクッキー
・有機トマトと有機バジルのクラッカー
・ほんのり苺が香る米粉のチーズケーキ
・有機抹茶と大納言小豆のぜんざいゼリー(豆腐の白玉入り)
・幸田産の苺とレモンのゼリー
等々
 
素材の組み合わせもさることながら、有機食材を使った商品が多いことから、ひとつひとつにこだわりが詰まっていることが想像できます。

写真左:生菓子 写真右:クッキー各種

「菓子屋 ワタリドリ」のお菓子は植物性の材料でつくられており、主に有機栽培された素材を使用しています。
 
それは、多様化する食生活の中でできる限り食べる人を選ばないものをつくりたい、安心して食べてもらいたい、そして何より食材の香りや風味の良さを伝えたいからだと、教えてくださったのは、ご主人の宇野一成さん。
 
植物性の材料は香りが強すぎないため、素材の風味をダイレクトに感じられるそうです。
それゆえ、その素材ひとつひとつにこだわりがあります。

宇野一成さん(右)、優子さん(左)。

宇野優子さん(左)   宇野一成さん(右)

使う素材は全てご夫婦で味見をし、納得できたものばかり。
 
「くるみやレーズン、いちじく等、有機食材といっても産地や作り手やその年によって味が異なるんです
と笑顔で語るのは、奥様の優子さん。

クッキーなど焼き菓子に使われている小麦にもこだわりがあります。

国産の有機小麦を使っているのですが、産地やブレンドによって味だけでなく、水分量やタンパク質の量が変わるため、同じレシピでも全く表情の違ったクッキーができるのだそう。
 
「面白いですが大変なんです。その年の小麦を使い始める時は何度か試作して傾向を掴みます。スーパーなどで一般的に売っている小麦は、毎年安定するようブレンドされているけれど、多く流通していない有機小麦はそうはいかない。でも、有機小麦の、中でもうちで使っている粉は、食べた時にふわっと鼻に抜ける香りが好きなんです。手間がかかるし決して安くないんですけど、この粉を使い続けていきたいですね。」と、一成さん。

クッキーは「菓子屋 ワタリドリ」の看板商品。

クッキーは「菓子屋 ワタリドリ」の看板商品。

「この粉が良い味を出してくれます。本当に材料に助けられているなぁと思います。」
 
そうおっしゃる一方で、素材の特性を把握し調整して、品質のバラつきを最小限にするには高い技術が必要となります。素材の味を生かしたシンプルなお菓子は、特に変化がわかりやすい。
 
「お客様に、“いつ食べても同じ味がするからすごいね。”と言われるんですが、(一成さんは)天候や季節に合わせて調整しながら、いつでも同じ味をつくり出していて本当に尊敬しています。」と優子さん。
 
宇野さんご夫妻は、とにかく美味しいものへの探求心が強い。
その昔、一成さんはお休みの日に東京に出向き、朝からケーキ屋を4軒ほど巡り、1軒につき4~5個のケーキを食べ歩いていたこともあるのだとか。
 
また、小さいスーパーを開きたいと思うほど、原料や素材が好きだという宇野さんは、選んだ材料について本当に楽しそうにお話してくださり、“美味しいものへの熱意”を感じずにはいられません。

自分たちのペースで、自身と向き合う

「菓子屋 ワタリドリ」は、2022年で9年目を迎えましたが、以前は沖縄料理のカフェを営んでおられました。
 
常連さんも多く賑わっていましたが、機械や既製品に頼らず、出来る限り手づくりで!と、こだわっていたため、仕込みに時間がかかり、心身共に疲弊していき、
 
“お客様には、健康志向のランチをお出ししているのに、それをつくっている自身が健康でないという矛盾”
に、戸惑っていたと言います。
 
そんな折、宇野さんご夫妻はマクロビオテックに出会います。
 
植物性のお菓子を食べる機会があり、それが美味しかったそうで、沖縄料理のカフェを始める前にパティシエをされていた一成さんは、当時認知がほとんどされていなかった植物性のお菓子屋さんをつくろうと決意。
 
3年続けた沖縄料理カフェは閉店し、まずは自分たちが健やかにゆったりとした日々を過ごすことを考え、夫婦ふたりで小さなお菓子屋さんを始めます。
 
鳥が好きだったことと、お菓子が様々な地や人へ渡っていく様をイメージして、店名は「ワタリドリ」と名付けました。

「自分たちが美味しい、楽しい、嬉しいと思わないと、お客様にもそう思ってもらえないよね」と宇野さんご夫妻。

「自分たちが美味しい、楽しい、嬉しいと思わないと、お客様にもそう思ってもらえないよね」と宇野さんご夫妻。

波照間島の黒糖や石垣島のお塩など、沖縄料理店時代からお気に入りの素材は今でもお菓子に使われており、その名残を垣間見ることができます。

お気に入りに囲まれて

「菓子屋 ワタリドリ」のお店は、様々な人の想いが重なり、形づくられています。
 
大工である一成さんのお父様が店舗づくりに協力され、壁の漆喰はご夫婦で塗り上げました。
入口の引き戸は畳屋さんからいただいたもので、外に面した開口部の建具は、京都まで引取りにいったもの。
建具の持ち主であった方が毎日米のとぎ汁で磨いており、大変状態の良いものだったそうです。
 
その他店内には旅先で出会った振子時計やインテリア、古道具屋で出会ったアンティーク家具など、全てにエピソードがあり、それを楽しそうに語ってくださるところからも、物に対するご夫婦の愛情を感じます。
 
お店から感じる、どこか懐かしく滋味深い雰囲気は、それぞれに宿った使い手の想いやあたたかさから来るものなのかもしれません。

鳥がお好きということで、鳥にまつわるものが目に留まる店内。

振り子の時計は旅先で出会ったもの。

鳥のモビール(写真右)は、作家さんの作品。

作家にオーダーした陶製の鳥(写真左)と、以前の持ち主が大切に磨いていた木建具(写真右)。

アンティーク家具に季節の花が彩りを添える。

この土地に、人に支えられている

「菓子屋 ワタリドリ」をオープンしてからしばらくは、この場所は工房として使い、東別院暮らしの朝市や松本クラフトフェアなどのイベントでお菓子を販売していました。
 
それらのイベント出店と、ショップへの卸売がメインだったのですが、ワタリドリのお菓子を求めてくれるお客様とコミュニケーションを楽しみながら、ゆったりと営んでいきたいという思いから、イベント出店をやめ、今は店頭販売と卸売、不定期にオープンするオンラインショップが窓口になっています。

欲しいお菓子を伝えると、宇野さんがとって詰めてくれる。様々な質問にも気さくに答えてくれます。

「お客様の喜ぶ顔を見るとやっぱり嬉しい。
お客様の反応や、お客様との会話から、次のメニューを話し合うんですよ。」
 
と笑顔で話してくださる宇野さんご夫妻ですが、まだまだ手探りで試行錯誤の連続だと言います。
 
子育て真っ最中ということもあり、実店舗のオープンも今は不定期で、Webサイト、Instagram、Twitterで随時案内を出している状態ですが、取材に訪れた日もオープン前からお客様が並ぶ人気店。

暖簾が出ている時は営業中。お菓子が無くなり次第終了なので、見つけたら入ってみましょう。

「本当はレアなお店にはしたくないんです。
プレゼントや手土産を見繕いに、気軽に立ち寄っていただけるようなお店にしたい。
だから商品のラインナップや運営方法など、課題は多いです。」
 
と宇野さんご夫妻。
 
「お客様をお待たせしてしまうシーンも時折あるのですが、待ってくださるお客様に助けられています。
ここに来てくださる方や、幸田の人たちは本当にあたたかい。
優しくて、支えていただいています。
これからも幸田でお店を営んでいきたいですね。」
 
ここでは内緒にしておきますが、おふたりの野望をいくつかお聞きしました。
 
「菓子屋 ワタリドリ」さんのお菓子づくりの旅がこれからも楽しみです。

(文・写真:松尾 絵美子 編集:ナルセノイエ)

 
 
菓子屋 ワタリドリ
 
愛知県額田郡幸田町芦谷畔杭瀬1-3
※営業日、営業時間は下記にてご確認ください。
雑貨屋さんでの取り扱いもあります。
詳しくはウェブサイトをご覧ください

《取材後記》

ワタリドリのお菓子をお土産に。
 
確かに、どのお菓子も素材の味が引き立っていました。そして、甘さが優しい。クッキーもバターを使っていないので、さっぱりといただけます。
 
季節ごとに様々な食材の組みあわせが楽しめるようなので、次に伺う時も楽しみです。

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