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アクション100case.004

 

つくり手の丁寧さを体験し、想いを大切にする
ライフスタイルインテリアショップ
soup.

アクション100case.004は、愛知県安城市でライフスタイルショップ2店舗、岡崎市美術博物館内ミュージアムショップの合計3店舗を展開されている「soup.」さんをご紹介します。

 
とっておきのおススメを集めたお店
 

soup.さんは国内外からセレクトした家具や照明、カーテン、日用雑貨に器などの暮らしの道具を扱うライフスタイルインテリアショップです。冒頭にお伝えした通り、安城市と岡崎市で3店舗を展開されており、この日は安城市に昨年8月に新築オープンしたsoup.本店にお伺いしました。

味わい深い木製建具と暖簾が目印。

シンプルな佇まいのsoup.本店。

7つのハウスが並ぶ。島・しまファームでは茄子のハウス栽培が多くを占めているが、夏の間は露地栽培も行っている。
茄子

店内の様子。広々としたワンフロアに、シーンに合わせた家具や照明、生活雑貨が並ぶ。一部2階もあり、打合せスペースもある。

家具や照明、カーテンといった、室内インテリアに関わるものの他に、キッチンウエアや文房具、伝統工芸品まで幅広く扱っている。(商品は入れ替わるため、写真の通りではありません。)

soup.で取り扱うグッズには、こだわりがあります。
 
「僕たちが自信をもって勧められるものを揃えています。数を売りたいわけではなく、いいと思ったものを共感してもらいたい。これいいでしょ?の延長線上にあるお店なんです。」
 
とおっしゃるのは、代表の松本典之さん。

茄子

代表の松本典之さん

「流行りに関係なく、自分の感覚で良いと思ったものを吟味して仕入れています。たくさんのものを扱うことは現実的に難しいということもありますし、ものへの想いやデザインの理由がないと、僕自身が納得できなくて、それをお客様に伝えることもできません。
 
つくり手の想いも大切にしたいし、丁寧につくられる様子を自分たちの目で見て理解したい。例えば宮崎椅子を取り扱っていますが、実際の工場へ足を運び、現場を見て、つくり手に話を聞きました。可能な限りつくり手に会い、話をし、目で見て“すごい”と思った感動を、お客様に伝えたい。
 
“値段が高い”と思われる方もいて悔しい思いをしたことも過去にありますが、情報がないままでは高く思われて当たり前かもしれないと思いましたね。その価値を伝えることが僕たちの仕事です。Webやカタログに載っている情報を頭に入れるだけでなく、現地でしかわからないことを言葉にして伝えたいと思っています。
 
それでお客様の価値観に刺激を与えることができれば嬉しいですね。」

 
はじまりは15坪
 

soup.さんは2004年に安城市新田町にてオープンしました。15坪の店内にイームズのシェルチェア5〜6脚と、好きな雑貨を中心とした“MY ROOM(僕の部屋)”を具現化したお店だったといいます。

soup.本店の一角に、初期の店舗の雰囲気を残したという。

soup.本店の一角に、初期の店舗の雰囲気を残したという。

松本さんは当時BOONやsmartなどの雑誌を読んでおり、その中で見るミッドセンチュリーの家具をはじめとする世界観に惹き寄せられました。
 
「カッコイイなぁ、いつかこんな部屋に住みたいなぁと思っていました。僕は、ランドスケーププロダクツ( http://landscape-products.net/ )の家具がドンピシャで、それを愛知で紹介したかったんです。
 
ランドスケーププロダクツの家具はイームズの影響も受けていて、アメリカの作家さんを呼び、自社ギャラリーで紹介したりもしていました。
 
その代表の中原慎一郎さんが、自身のブランドを立ち上げる前に勤めてらしたお店が、インテリアストリートとして有名な東京の目黒通りにあった伝説のお店「MEISTER」(2015年閉店)でした。
 
イームズが日本に流通する足がかりとなったお店で、僕もお店を始める前に数件インテリアショップを巡りましたが、MESTERはすごかったですね。お店を立ち上げるにあたり、大いに影響を受けました。
 
当時の愛知では、ミッドセンチュリーの家具と言えば、古着ショップに椅子が1、2脚飾ってあるような存在でしたが、MEISTERでは家具を飾りではなくライフスタイルのひとつとしてスポットを当てていたんです。それを愛知で実現してみようと。
 
そうして始めたお店ですが、ランドスケーププロダクツは有名でしたから、はじめたての小さなお店が取り扱い店になるのは簡単ではありませんでした。何度もオファーをし、直談判を重ね、ようやく取り扱い店として認めてもらえました。好きなブランドがあることで、自分の中で方向性が確固たるものになりましたし、お店のブランディングにも繋がったと思います。」
 
好きなものを扱いたい、良いと思ったものを紹介したい、という松本さんの熱意は、当時のお話からも垣間見えます。

家具に触れる松本さんの様子からも、愛情が伝わる。

家具に触れる松本さんの様子からも、愛情が伝わる。

 
時間と共に成長した空間
 

15坪でスタートしたお店に訪れるお客様は、トヨタ系の寮で過ごすひとり暮らしの男性が多かったのだそう。当時は雑貨屋さんというと女性向けのイメージで、男性が自分の部屋を着飾るために気後れすることなく訪れることのできるお店は少なかったと、松本さんはおっしゃいます。
 
インテリアショップ自体が少なく、人々の関心も低かった時代。
 
そこから、デザイナーという職業が評価されるようになります。
家電や携帯電話のデザインに関心が寄せられ、美容院や喫茶店がお洒落な空間になり、マンションや住宅にもデザイナーズという言葉が多用されるように。人々はお洒落なものや、人とは違う個性を求めるようになり、“物を買う”ことから“物の価値を買う”ことへシフトしていきます。
 
そうした時代背景と共に、soup.への注目度も高くなり、併せて取り扱うものが多様化していったそうです。


「人生の中で家具を買うタイミングは、大きく分けて3回くらいしかないと思います。
1度目は、はじめてのひとり暮らし。2度目は結婚して賃貸を借りる時。3度目は家族が増え、家を所有した時。
お店を始めた当時は、1度目のタイミングの方がほとんどでしたが、今は3度目のタイミングの方も多い。お客様に育てていただいたという思いは常にありますね。」と話す松本さん。

家族で、カップルで、おひとりで。今は広い店内で、様々な暮らしに合う家具が見つかります。

家族で、カップルで、おひとりで。今は広い店内で、様々な暮らしに合う家具が見つかります。

 
ひとつの椅子がもたらす、暮らしの豊かさ
 

松本さんに椅子の選び方を少し教えていただきました。
 
「毎日使い続けるものなので、座り心地にフォーカスを当てて選んでいただきたいですね。
 
例えば、アームがあるもの、ないもの、半分くらいの長さしかないものと、大きく分けて3種類ほどあります。食事をするときはアームは使いませんが、手紙などを書いたりするときにアームがあるとすごく楽です。
 
座面も、板状のものとクッション性のあるものがあり、クッション性においても椅子によってさまざま。そして日本で生まれた椅子か、海外で生まれた椅子かによっても異なります。平均身長も、例えば日本人とオランダ人では10cm違いますし、素足で過ごすのか靴で過ごすのかという生活様式の違いによっても基準寸法が違ってきます。
 
日本では椅子と机がセットで売られているシーンは多いですよね。
 
同じ椅子で揃える美しさもあるけれど、人それぞれ体系も違いますから、自分専用の椅子を選ぶのが良いのではないかと思います。(前述の通り)
 
椅子それぞれに個性が特徴がありますから、使うシーンを思い浮かべながら座ってみてください。そうすると、しっくりくる椅子は4〜5脚に絞られますよ。」

肘掛や背もたれの高さや形状によってもフィット感が違う。

肘掛や背もたれの高さや形状によってもフィット感が違う。

肘掛や背もたれの高さや形状によってもフィット感が違う。

机で手紙を書いたり、PC作業をする際に楽なアームが長いタイプ

肘掛や背もたれの高さや形状によってもフィット感が違う。

肘まわりがすっきりとして動きやすいアームが短いタイプ

茄子と季節野菜の和え物

座面の高さや肘掛けの高さの微妙な違いがある。普段の座り方で腰かけて吟味してみて。

「自分で納得するものを、自分の意思で選ぶと、椅子への愛着が変わってきて、毎日“これいいなぁ”と思えるようになる。座るたびに満足できると、暮らしが少し豊かになる気がしませんか?」と楽しそうにおっしゃる松本さん。
 
椅子はそうそう壊れるものではなく、毎日使うものです。思い入れの有無はプライスレスですし、せっかくならお気に入りを見つけたいですよね!

収穫コンテナを押しながら畑を見回る村田真吾さん。1日おきに収穫しながら、間に栽培管理業務を行っている

日用雑貨から家具まで、暮らしを彩るアイテムが揃う店内。ちょっとした小物を揃えたり、質の良い雑貨やプレゼントを探したりと、普段使いができる。

家づくりは様々な要素があり、それぞれにプロフェッショナルがいます。
 
それが分断されてしまいがちですが、本来はコラボレートしながら、ひとつの空間をつくりあげていきたいところ。
 
ナルセノイエでは、見学会場にて家具やインテリアのプロフェッショナルによるコーディネートをしてご覧いただいています。
 
また希望される方には、soup.さんと協働して空間づくりをしています。
 
家具はもちろん、照明器具やスイッチ、他の店舗では取り扱いの少ない自然素材のカーテンなど
お気に入りの空間づくりに、ぜひそのようなコーディネートも参考にしてくださいね。

 
リアルショップだからこそ、できること
 

ところで、コロナ禍を経て、さらにネットショッピングが充実するようになりました。
 
今は何でもインターネットで手に入る時代です。
松本さんも、リアルショップの必要性について考えた時期もあるとか。
 
「リアルショップでしかできないことって何だろう、と考えたんですね。それは人と人とが顔を合わせることにより得られる、学びや体験なんじゃないかと思います。
 
ネットでは指名買いはできるけれど、出会いは少ない。買うと思わなかったものに出会うのがリアルショップです。
 
実際に手に取り、触れて物を選ぶ楽しさは、リアルショップでしかできません。
 
ですからsoup.では、普段は数点しか置いていない陶器を期間限定でたくさん仕入て陶器市を催したり、ワークショップを開催して少し作業をすることで、ものづくりの背景を伝えたり、職人の凄さを体験してもらったりして、選ぶ楽しさ、買う喜びに繋げられる機会を積極的に設けるようになりましたね。」と松本さんは話します。

茄子を診て回る村田さん。茄子たちを見る目が優しい。

家具のお手入れ方法なども気軽にアドバイスしてくれる。このようなコミュニケーションも、リアルショップならでは。

 
これからもこの地で
 

soup.さんには、県外から訪れるお客様もいらっしゃいます。名古屋への出店の話もあるそうですが、松本さんはあくまで安城を中心とした三河地方に執着したいとおっしゃいます。
 
「好きではじめたこの仕事で、ここまで続けてこられたのは、この地があったからです。店舗が増えていっても、本店はここ安城に置きたいと考えています。
 
安城という地域を見ると、例えば東海道新幹線の駅があるけれど、駅としての存在感は薄い。滞在していただけるような魅力的な駅周辺にしたい、という想いが街にはあり、これからの発展に期待しています。安城で過ごす時間が楽しくなるような街になってほしいですし、僕たちのお店が少しでもその力添えになれば嬉しいです。」
 
soup.本店には、コーヒーショップが併設されています。家具選びの息抜きに使っていただくのと同時に、安城のコーヒースタンドとして立ち寄ってもらいたいという想いもあるそうで、「気軽に珈琲を飲みに来てほしい」と話す松本さん。

コーヒーショップでは、一杯ずつ丁寧にハンドドリップで淹れている。マフィンなどの軽食もあり、カウンターで一休みできる。

雑誌で見かける家具やファッション雑貨の提供店は東京にあり、気軽に見に行けなくて残念な気持ちになった経験のある方は多いのではないでしょうか。
 
規模が大きくなってもこの地域で活躍され、また同時に街づくりにも参画されているお店があるのは嬉しいことです。
 
椅子ひとつとっても、その特徴や使い方、背景にある製造過程から歴史に至るまで、とにかく知識の豊富な松本さん。
松本さん以外のスタッフさんも、とても知識は豊富です。
そのお話を聞いていただくだけでも面白いはず。
 
ぜひお気軽に足をお運びいただきたいお店です。

(文・写真:松尾 絵美子)

 
 
soup.本店
愛知県安城市住吉町3-6-14
営業時間 11:00~19:00(定休日:火曜日・水曜日)

 

 

 

 
soup. Life Store
愛知県安城市篠目町竜田86-8
営業時間 11:00~19:00(定休日:水曜日、第1・第3火曜日)
 

 
museum shop YAGURA
愛知県岡崎市高隆寺町峠1番地(岡崎市美術博物館内)
営業時間 10:00~17:00(定休日:岡崎市美術博物館 開館スケジュールに準ずる)

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