暮らしの風景

Vol.11

ゆるやか平屋暮らし

土地探しをする中で地元の不動産屋さんに紹介されたのは、奥様のご実家から徒歩数分のところにある約150坪の敷地。そこにお庭を広くとり、L字形の平屋を建てました。田園風景が広がる郊外に建つお住まいでの、子育て真っ最中のK様の暮らしを拝見しに伺いました。


 
平屋に住まう
 

冒頭にお伝えしたように、K様のお住まいは平屋建てです。購入した長方形の敷地の中央部にL字型に建物を配置し、その前後に車庫のある駐車場と、お庭があります。敷地にゆとりがあったこと、奥様が育ったご実家が平屋だったこと、また大分県にご実家のあるご主人は、ご両親から歳を重ねてからを考えて平屋を勧められたことから、ご夫婦ともに平屋建てを希望されました。
 
室内は、家族の集まるLDKが中心にあり、西側の縦方向に個室が並びます。お庭に面したLDKは天井を高くして吹き抜け上部からも光を取り入れて、明るく風通しの良い空間に。主に夜間使用する個室群のある西側は開口部を少なくして廊下で直線につなぎ、断熱性を高めながら、外からの風通しも良いつくりに。LDK上部の吹き抜けにはロフト空間があるのですが、そこは普段使いはしない想定のため、昇降を梯子で行うという潔さ。その他全体的に収納部分が少ないのは、ご夫婦共にできる限り物を持たない生活であるからで、4歳と2歳のお子様がいらっしゃる子育て真っ最中のお住まいですっきりした印象のある居住空間です。


右側の高いほうがLDK、左側の低いほうには寝室や水回りがある。

中心にあるLDKにて。写真左側はキッチンで、そこにある梯子からロフトに上がる。

家事は協力して行っている。食べたいものや得意料理によってご夫婦共にキッチンに立つが、キッチン周りは料理好きのご主人の希望が多く反映されている。コモンスペースからはあまり見えないキッチン奥に大容量のパントリーがあることも、室内がスッキリ保たれている理由。

ダイニングの西側には和室があり、キッチンからも様子を見ることができるこの場所は子どもたちの遊び場となっている。

四畳のタタミルームが子どもたちのプレイルーム。障子は閉めずに、LDKと一体空間として使っている(写真左上)その奥には子どもたちと奥様の寝室があり、その間にある障子の小窓は、子どもたちを寝かしつけた後にキッチンから飲み物などを運んでもらうのに役立っているのだそう(写真右上)

お部屋には子供達の作品がたくさん飾られている(写真下)

寝室の奥は、トイレ、洗面・脱衣・お風呂などの水回りが固められている。全て引き戸になっており、普段は開けているので、風が隅々まで行き渡っていて気持ち良い。

 
好きや思い出と共に
 


家づくりを考え始めてから、住宅展示場をはじめとする様々な住宅会社を回ったというK様。その一環でナルセノイエのモデルハウスを訪れ、その日にナルセで家づくりを進めることを決めたと言います。
 
「後からわかったのですが、実家を増築して子供部屋を作ってもらった時に、(地元の大工さんに依頼することが決まっていたが)母が参考にしていたのが、当時完成したばかりのナルセさんのモデルハウス(現在のほぼ毎日カフェ)だったのです。それを母から聞いた時はびっくりしたのと同時に、自分が多感な時期を過ごしていた場所がそういう雰囲気を目指して作られていたものだったから、最初に訪れた時、なんとなく居心地が良かったのだとわかりました」と奥様。
 
ご実家では、L字だった建物形状をコの字にする形で増築してできた子供部屋で、小学3年生から高校卒業までを過ごしました。そのご実家を、実は1年前にナルセノイエで建替えさせていただいたのですが、その際に奥様のお部屋にあった本や雑貨はこの家のロフトに持ってきて、今も飾られています。
 
「ロフトは、私の子供部屋の雰囲気そのままです」と笑う奥様。
「もともと予備的な場所で作ってもらった場所なのです。物を置く場所というよりは、子育てが落ち着いたら好きな切り絵やクラフトワークを座って楽しむ場所にしようかとも思っていて。なので、階段は据え付けではなく梯子階段で、大きいものを出し入れするときは滑車を使ってダイニングから上げ下げしています」と語るその場所は、平屋の規格に沿っているので天井高が低く、どこか懐かしい山荘のような雰囲気を纏っていました。

奥様の思い出が並ぶロフトの様子。荷物の出し入れは、滑車とロープを使って吹き抜けから行う。

ロフトへ登る梯子はお子様の遊び場にもなっているが、しっかりした引き戸がついているので子どもの力では開けられないため、大人が楽しめる空間になっている。

お住まいを新築される前、ご夫婦は奥様の祖父宅に住まわれていたそう。そこはお祖父様が釣具店を営んでおられた場所で、店舗併設の住居でした。お祖父様がお亡くなりになり、その建物の一部を壊すことになったため、そこに使われていたガラスを使ってK様邸の建具を作りました。また奥様のご実家にあった建具も壁の装飾に使われています。そのほか、ご夫婦のお気に入りのタイルを所々に埋め込んだり、この地域の雰囲気に似たアンティークのステンドグラスを、お気に入りのピクチャーウインドウと合わせて配置したりと、ご夫婦の思い出や好きなものが散りばめられているK様邸は、あちらこちらに温かな想いが宿っています。

ご夫婦が以前住んでいた祖父宅のガラスをはめた建具(写真左上)奥様のご実家の建具を和室の壁に埋め込んでいる(写真右上)
リビングや洗面所には、ご夫婦で選んだお気に入りのタイルが彩りを添えている(写真下)

キッチン横の窓から見える里山の風景が大好きだという。その横にあるステンドグラスは、アンティークショップでの掘り出し物で、この窓から見える雰囲気に近いものを感じて配置したのだそう。キッチンにあるこのステンドグラスは、壁を隔てて玄関ホールからも見ることができ、家族や来訪者を迎えてくれる(写真右下)

レトロな雰囲気が愛らしい器やお鍋はアンティーク品。ご実家の倉庫に眠っていたものや、祖父宅にあったものなどを愛用している。

 
子育てと養鶏と暮らしと
 


新しい住まいでの暮らしをスタートすると同時に子育てがスタートしたK様。子どもたちといる時間を少しでも長く持つことができ、また子どもたちも少し参加ができるような仕事を考え始め、植物や小動物を育てるのがお好きな奥様は養鶏を習うようになりました。お師匠さんの元に通い、養鶏や畑作業を一緒にしながら、イロハを学んだと言います。近い将来独立を考えており、いまK様邸のお庭では、鶏たちが元気に走り回っています。
 
「我が家は鶏卵の黄身の色で季節を感じています。若草をいっぱい食べる春〜初夏は一番黄身の色が濃くなり、冬は身体を温めるために米や穀物をたくさん食べるので黄身の色が白っぽくなる。鶏が食べているものが色に直結するので、今何を食べているかが卵でわかります。最近は我が家で採れる卵を直接買ってくださる方も出てきて嬉しいです」
 
平飼いで鶏が好きなものを自由に食べている環境だからこそ、卵に色の違いが顕著に現れ、季節すら感じられることに驚きます。鶏は歳を重ねるとだんだん卵を産めなくなるため、そうした鶏は最後にお肉をいただいて、命の循環の中で暮らしています。子どもたちも、鶏の扱いは手慣れたもの。取材時には悠々と鶏を抱きかかえて見せてくれました。

ふくふくと育った鶏たちは草を喰み、砂を浴び、自由に駆け回っている。写真右下は採れたての卵。

お庭は、植物を育てるのがお好きな奥様が主に手入れされていて、取材に訪れた春は様々なお花が彩り鮮やかに咲いていました。鶏たちと一緒に子ども達が駆け回り、草花を詰んだり、ご家族で会話をしながらお庭を眺める様子はなんとも牧歌的で微笑ましい。
 
「一番好きな季節は5〜6月です。庭の桑が実をつけるのですが、それを食べるのが大好きなのです。子ども達も口を紫色にして食べますよ」と奥様が笑う。
 
自然の恵みから季節を楽しむ暮らしが垣間見えます。
 

ウッドデッキを通じて内と外との行き来も容易で、のびのびと遊ぶ子ども達。お花を水に浮かべて、花手水を作ってくれました。右下写真は、5〜6月に実をつけるのが楽しみな桑の木。

正午近くになると、カツラの木がウッドデッキに綺麗に影を落とす。

 
自然体にこれからも
 


希望していた薪ストーブや土間空間のあるリビングには、アコースティックギターや電子ピアノがあります。これらは奥様の持ち物。子育てに少し余裕が生まれ、また養鶏の勉強もひと段落してきたため、最近、バンド活動をスタート。担当はボーカルで、駐車場にある車庫で練習をしており、ほぼ毎日カフェで定期的に演奏会をしています。
料理のほかに、エンジンのあるものが好きなご主人は、お休みの日にツーリングをしたりもします。
ただそれらの活動は、子育ての合間に生まれた時間を活用しているもので、基本的には子育てに奮闘する日々。お子様が生まれる前に設計をしていたこの住まいも、お子様が生まれ、暮らしが変わり、予定していた使い方をしていない空間もありますが、それも想定内。
 
お休みの日は子どもたちと話しながら料理をしたり、楽器を弾いたり、お庭やプレイルームで遊んだり、と賑やかに過ごしていると言います。

冬は朝晩ともにエアコンはほとんど使わず、薪ストーブで暖をとる。「朝、外に薪を取りに行き、寒い寒いと言いながら暖まるのを待つのも良い時間です」と奥様。

お庭の反対側にある駐車場と車庫。車庫といっても作業小屋のようなもので、ご主人が在宅ワークをする際にも使っている。薪の調達と管理は、チェーンソーを使うのが好きなご主人の領分。


流れに身を任せるような自然体な暮らしが印象的なご家族の暮らし。様々な状況によって変わりゆく生活を、この家はこれからもおおらかに受け止めてくれることを予感させてくれました。K様、暮らしの現在地を見せていただき、ありがとうございました。
(写真・文:松尾 絵美子)

 


         
   T様邸DATA
   建築年 :2021年
   家族構成:ご夫婦+お子様2名
   ※取材時