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アクション100case.011

 

産前産後の女性を支えたい

ドゥーラステーション めぐる

アクション100 case.011は、岡崎市の「一般社団法人 ドゥーラステーション めぐる」さんをご紹介します。


出産前後の母親に寄り添う「産後ドゥーラ」という仕事


出産前後の母親に寄り添う
「産後ドゥーラ」という仕事

ドゥーラとはギリシア語で「他の女性に寄り添い、支援する経験豊かな女性」を意味する言葉です。日本ではまだ馴染みが少ないですが、欧米をはじめとする海外では、妊娠・出産・産後の女性をサポートする職業として浸透しています。

ドゥーラには妊娠中から出産時のサポートを中心とした出産ドゥーラと、出産後の産褥期のサポートを中心とした産後ドゥーラがあり、今回ご紹介する「一般社団法人 ドゥーラステーション めぐる」(以下、めぐる)では、産後ドゥーラ(以下、ドゥーラ)の養成とサポート活動を行っています。

今回は、めぐる を立ち上げた 代表理事 松本忍さん(以下、松本さん)にお話をお聞きしました。

帆布かばん

後述の「こそだてひろばtetowa」のキッチンに立つ、松本さん

松本さんが「ドゥーラ」に出会ったのは、ちょうど10年前のこと。

当時、松本さんは
五歳と二歳のお子様の子育て真っ最中。妊娠・出産・子育ては大変でしたが、家事の全てを夫が担ったこともあり、恵まれた環境だったと言います。

一方で、産後ケアのサービスがほとんどなかった時代でそのような手助けが得られる人ばかりではないことを知り、その必要性を切に感じることになります。

会社員として働いていた松本さんでしたが、「産後のお母さんを助けたい」という思いは日に日に強くなり、一念発起。会社員を辞め、ドゥーラになることを決意し、必要となる知識や技術を習得して、三河地方初のドゥーラとして活躍することになります。

帆布かばん

ドゥーラの日本での知名度の低さから、安定した活動をするのは大変だったが、依頼の声がなくなることはなかったと言います。

ドゥーラの仕事は多岐に渡ります。

新生児のお世話や、炊事・掃除・洗濯・買い物などの家事、きょうだいのサポート等など、保育と家事代行の両方を、お母さんのお手伝いをする観点でカバーするイメージです。

多くは妊娠期にカウンセリングを行い、大まかな内容をプランニングして出産後に備えます。サポートする時期は、産褥期が主となりますが、妊娠期や、産褥期を過ぎた後も必要に応じてサポートを行うそうです。

7年ほどサポートをされている方もいて、サポート内容も含めてそのあたりは常にコミュニケーションを図りながら、状況に応じて臨機応変に対応をしています。

以前であれば、祖父母や親戚、地域の人たちで行っていたり、里帰り出産後ゆっくりとご実家で過ごす方もいらっしゃいましたが、今はそのような環境の人ばかりではありません。

働きながらの出産育児や、出産の高齢化も進んでおり、現在に合わせたケアが必要となります。また出産はケースバイケースであることがほとんどで、特に初産の方にとっては未知の体験です。

経験豊富なドゥーラがお母さんに寄り添い、生活面だけでなく精神面でも支えることができれば、お母さんの大きな負担軽減になります。

「カウンセリングでお話を聞くだけでも、心が軽くなったと言われることがあります。今は情報が先行して、実体験が伴わないことが多い。出産までの準備はしていても、出産後の状況を思い描き、十分な計画ができている人は少ないです。

それに、お母さんだけでなく、お父さんやきょうだいもはじめての経験なので、ストレスを抱えて不穏な空気になることもあります。

その時に第三者のドゥーラが入ることで、緩和できることがある。うまく使ってもらえればいいな、と思います」と松本さん。


ひとり よりも みんなで

松本さんは最初、フリーランスでドゥーラの活動をスタートさせました。

というのも、当時はドゥーラの育成プログラムを経た後は皆、フリーランスで活動していたのです。

6年ほど個人で活動する中で、様々な課題が浮かびます。

例えば、松本さんが体調を崩せば、代わりがおらず、お母さんの手助けができなくなる可能性や、悩みを共有したり相談したりする相手がいないこと、依頼が集中すると手が足りなくなってしまうこと、育成プログラムを終えたのち経験が浅い状態ですぐ実戦となる状況、ドゥーラそのものの活動だけでなく、総務・経理・広報など、
全てを一人でこなす必要性、等など。

「ドゥーラという職業をきちんと確立させたい。そのために、ドゥーラをサポートする土壌をつくり、仲間たちが安心して活動できるようにサポートしていきたい」という想いが募り、2023年に再び一念発起。

同じく個人で活動していた仲間と共に「一般社団法人 ドゥーラステーション めぐる」を設立します。

帆布かばん

優しい笑顔で語られる言葉は、目的をしっかりと見据えたバイタリティ溢れるものばかり。

めぐるでは、ドゥーラとしての心構えや必要とする情報、助産師さんや子育て支援の方の講座や、料理・掃除・救命救急などの知識、また実践を基にしたケースバイケースのロープレなど多岐に渡るプログラムが用意されています。

そして面談を挟みながら実習を重ね、養成講座を全てクリアすると認定資格を発行します。この1年で7人のドゥーラを輩出したそうです。

めぐるに所属しているドゥーラは愛知県と岐阜県合わせて現在19名。

広報や事務に関することは本部で一括し、所属ドゥーラは活動に専念することができています。個々のお母さんの事情や環境に応じて変化する活動方針は、カウンセリング内容を基に本部で検討した上で立てるので、安心してサービスを提供できる上、質の向上にも繋がっています。

そして、定期的に集まる場を設け、積極的に情報交換や意見交換を図っていると言います。

「少しでも多くのドゥーラが、長く楽しく続けられたらと願っています。みんなやりたいことに集中できて、楽しそうにやっていますよ」と笑顔でおっしゃる松本さん。

団体として活動するようになり、松本さんが抱いていた課題が解決されつつある中、もうひとつ良いことが。

それは、法人格を持ったことで、行政の子育て支援事業に参入できるようになったことです。2024年10月からは、
安城市の産前産後支援事業に採用されたため、補助金を使ってドゥーラサービスを利用できるようになりました(利用には諸条件があります)。またこの動きは、近隣の行政にも広がり始めているそうです。

ドゥーラの認知が拡大し需要が増えることが見込まれる一方で、ドゥーラの数やカバーできる地域を増やし、安定したサポート活動ができるようにしていくことが次なる課題となっています。


気軽に立ち寄れる拠点をつくる

ドゥーラの育成と安定したサービス提供の土壌を整えている松本さんですが、一方で岡崎市で認可外保育施設「こそだてひろば tetowa」(以下、tetowa)を2024年1月にオープン。

一時預かりとデイサービスを併せた場所で、保育士とドゥーラが常駐しています。目の届く範囲でお子様を遊ばせながら、大人同士で世間話や悩み相談をするもよし、用事を済ませるためにお子様の一時預かりを利用するのもよし、仮眠室も用意されているので、お昼寝をすることもできます。

「産後、身体が整ってきたら外に出たくなります。その時に安心して出かけられる場所を作りたかったのです。

『子どもを預けるのは気が引けるけれど、ずっとひとりでお世話をするのはつらい』
『夫に子どもを預けて用事を済ませたいけれど、ふたりきりでは不安』

など、ニーズは多岐に渡りますが、保育士もドゥーラもいるこの場所であれば安心できる、子どもたちを遊ばせておきながら育児の相談や情報交換ができる、等、お母さんたちからの喜びのお声をたくさんいただいています」

帆布かばん

建物の一階にあるtetowa。元々は製菓材料の小売店だった。上階に住まう大家さんは子育て支援をしたいと思っており、身近な応援団でもある。

帆布かばん

向かって左側を一時預かりゾーン、右側をデイサービスゾーンに緩やかに分けている。
一時預かりゾーンは淡い黄色の壁色に照度の高い照明でハツラツとしたイメージ。読書やお絵描きもしやすい。
デイサービスゾーンは壁色を淡い緑にし、温かみのある照明や色合いでまとめてホッと息抜きができるようなイメージになっている。
これらは明確に分かれているわけではないので、一緒に過ごしても、少し離れてくつろいでもよく、その時の気分やニーズに合わせられるように配慮されている。

帆布かばんを縫う

キッチンは、家庭によくある形、設備を用意している。ここで料理教室をしており、教室後にお母さんが実践しやすいようにという配慮。tetowaでは食事の提供もしており、一日ゆったりと過ごすこともできる。

miccaのロゴ
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基礎や柱はそのまま活かし、木で覆うことでベンチにしたり、起伏のある室内にしている。天井の配線も一部表しで、子どもたちに建物の仕組みを説明するのにも一役買っているそう(写真上左右)
風合いのある床板は、製菓材料の小売店だった当初のまま(写真左下)
一時預かりの壁の一部はホワイトボードになっており、マグネットで遊んだり、お絵描きができたりする(写真右下)

miccaのロゴ
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「産褥期のお母さんもお父さんも、寝てなさすぎです。積極的に寝てほしい」と松本さんは言います。お昼寝ルームは、丸太の香り漂う空間。ふかふかのお布団でぐっすり眠れそう。

「子育てに疲れたり、不安を感じたら、いつでも頼ってもらえる存在であれたら嬉しいです」と松本さん。


松本さんのこれから

帆布かばんを縫う

「指導するのではなく、一緒に過ごしながらできることを見守り、必要に応じて手助けをする距離感を大切にしています。産褥期は本当に大変ですが、お母さんのお顔を見ていると、その時期にしっかり養生できたと思える瞬間があります。その時が一番嬉しいですね。」

どこまでも子育てに奮闘するお母さんやお父さんに寄り添う松本さんは今、「ドゥーラのお母さん的存在」になろうと頑張っておられます。

お母さんにしっかりと身体を休めてもらい、元気に子育てや暮らしに向かえるようになるために、そのサポートをするドゥーラもまた、心体共に健やかに活動できることが大前提です。そのための仕組みづくりに邁進されている松本さんですが、それが軌道に乗ったあとは、色々とやってみたいことがあるそうです。

「tetowaのあるあたりは、私が子供の頃、まわりの地域からお買い物に人が集まるような場所でした。百貨店があり、個人商店が軒を連ねており、活気のある街でしたが、今はお店が少なくなり、車がないと不便な場所になってしまいました。再び活性化させて、車がなくても安心して住める街づくりに参画するのもいいなと思っています」

「それにドゥーラとしても、訪問するスタイルと、立ち寄る場所ができたので、その他のニーズに応える場所をつくるのもいいな、とも思っています」

松本さんのアイディアや想いはまだまだ湧き出てきているようで、新しい世界をエネルギッシュに開拓していかれるご様子が目に浮かび、これからのご活躍が楽しみです。

また私自身も、恥ずかしながら今回の取材で、ドゥーラという仕事を知りました。子育て中のお母さんはぜひ気軽に声をかけてみてください。そして子育てをサポートする側への関心がある方は、ドゥーラという職業を考えてみるのもオススメです。

(文・写真:松尾 絵美子)

 
かばん作家micca
 

こそだてひろば tetowa

 

〒444-0057 愛知県岡崎市材木町1-37


web
tetowa WEBサイト
IG
tetowaのInstagram
営業時間や料金体系などはWebサイトをご参照ください。

 

一般社団法人ドゥーラステーション めぐる
〒444-0854 岡崎市六名本町20番地15


web
めぐる WEBサイト
サービス内容やご利用相談、またドゥーラ講座についてはWebサイトをご参照ください。

 
 

安城市産前産後支援事業について
コチラ
支援内容や利用条件などをご参照ください。

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