アクション100case.017
住まいのルーツを訪ねて
『山長商店』
アクション100 case.017は、ナルセノイエがつくる住宅の構造材を供給してくださる、和歌山県の山長商店さんの仕事をご紹介します。
山長商店の構造材をつかう
ナルセノイエでは、柱、横架材、土台の木材=構造材を、和歌山県田辺市にある山長商店から供給しています。山長商店は江戸時代末期より林業を営み、自らの山林で育った杉や桧などの木材を加工し、全国の住宅や一般建築物に供給しています。江戸時代に紀州藩が治めたことから、一帯の木材は紀州材と言われ、全国的に名の知れた林産地です。中でも山長商店は、植林から育林、伐採、製材、乾燥、検品・強度検査、プレカット、そして現場への納材までを一貫して行っており、一本一本個性が異なる木材を高い技術で品質管理し、安定的に供給してくださるので、安心して使うことができます。また高速道路を使えば、安城市から車で4時間ほどの比較的近い地域であるため、戦後多く植えられた杉や桧といった国産材を使うことで、輸送CO2の排出を抑えながら、森林保全と林業継続の一端を担いたい想いもあり、お付き合いをさせていただいております。
秋のある日、ナルセノイエの住まい手さんから募集を募り、スタッフも一緒になって、住まいを支える重要な構造材のルーツに触れるべく、和歌山県田辺市の山長グループ※の山と工場を訪れました。
※山長グループは、株式会社山長商店(木材製材、プレカット販売)と山長林業株式会社(育林、伐採、搬出)と、モック株式会社(建材販売)、紀南砕石工業株式会社(砂、砕石、砂利、真砂土販売)からなります。今回は山長商店と山長林業の仕事を見せていただきました。以下、山長商店と山長林業を、山長と表記します。
山長本社にて、ここは木材の製材、乾燥、検品、プレカット加工を一手に行う中枢。このほかに、管理する山林と貯木場もみせていただきました。
故郷の景色
山長本社社屋から車を30分ほど走らせたところに、山長が管理する山林があります。紀伊半島に約6,000haの自社林を保有しており、植林→育林・間伐→皆伐・出荷と、一連のサイクルを100年以上続けておられます。最初に案内していただいたのは、「皆伐」と呼ばれる木をすべて切り出す作業をしている場所。住宅の構造材を含む、出荷材を伐り出す場所です。
成長過程で枝を払い、下草を刈り、曲がった木を除伐し、間伐を行って十分な空間をつくり、構造材に適した木材に育つよう管理されてきたため、枝は上部にのみ残り、まっすぐに育っている。
写真下左:山の案内人を務める、山長林業の田上(たのうえ)さん。わかりやすい図を用いながら、樹を伐採して集積し、山から運ぶ方法についてお話しいただいた。昔は全て手作業だったが、今は最新の重機や道具を使いながら効率的に進めている。重機の操縦席は空調付きで作業がしやすく、若手社員にも好評だという。
伐採には、間引きをする「間伐」と、一帯の樹をすべて伐る「主伐」があり、今回の見学地は主伐を行っている場所。地崩れを起こさないためにも計画的に行われており、山全体の中で部分的に展開。谷に沿って道が整備されており、重機や車が近くまで入ることができる。
続いて、真っすぐに伸びた針葉樹が立ち並ぶ森に移動。
一帯は明治26年に20haに10万本の樹を植林した記録が残っており、130年を超える木々たちが迎える様は圧巻。ところどころ近年植林された場所があり、足元には下草が茂り、健全な循環と手入れを感じられる、豊かな森です。
写真下:60年生の樹から4m×3本、3m×2本の柱材(芯持ち材)が採れる図。一番根本の部分は1番玉と呼ばれ、上になるにつれ、2番、3番玉と呼ばれていく。木の中心を持つ「芯持ち材」は構造材の柱として使われるが、どんなに大きな樹でも中心部しか取れない。中心部の周りの部分は、横架材や造作材などに使われる。
写真左:田上さん(右)と、コーディネーターを務める営業・広報の迫平(さこひら)さん。息のあったやり取りでスムーズにツアーが進んでいく。
「ここは、私の祖父の代から携わっている森です。このあたりの林業に関わる人たちは『山長さんのおかげで生活ができる』と思っていて、そういう話を昔から聞いてきました。私が今伐り出しているのは祖父が植えた木で、父が植えた木は伐り出せないし、私が植えた木は孫の代が伐り出します」
一代では完結せず、代々守り育てていく仕事。細やかに帳簿をつけて管理し、次の代に繋げているそうです。田上さんのお話しから、「天然木を使う」ということの有難さと意義を感じずにはいられません。
針葉樹の森に入ると、一定の方向に枝が伸びていることがわかる。これは日が当たる面に枝をつけるためで、そちらの面が節が多くなる。また斜面に対して踏ん張りながら立っているため、斜面を背にした側は年輪幅が細かく、強度が出やすい。一方、斜面の谷側は「腹」と呼ばれ、柔らかく、目がきれいに出るとされている。
「杉と桧の違い、わかりますか?葉や樹皮からも違いがわかりますし、生える場所も異なります。杉は寒さに強く、雪の重みに耐性が強いので、日本海側の針葉樹はほぼ杉です。今回案内した山は、桧を7割、杉を3割育てています。桧は水を嫌い、杉は水を好むので、それぞれ適した場所に植えており、共存はしていません」
杉と桧の見分け方を教えてくださる田上さん。写真左が杉で、右が桧。杉は立体感のある葉で、樹皮はピタッとくっついており簡単には剥けない。一方、桧は平面的な葉の形をしており、樹皮は浮き気味で、ペロリと比較的簡単に剥ける。
山長の山々を見渡す高台でお弁当タイム。教えていただいたことを反芻しながら、参加者同士でのおしゃべりも楽しい時間に。山全体を見渡すと、部分的に樹種が異なることがわかる。「落ち着いた緑色でブロッコリーのようにモコモコしているところは広葉樹林です。植林をしないと、シイやカシの木が優先して育ちます。崖地で植林できないので、広葉樹が生えています」と教えていただいた。
山から工場へ
伐採された木は、貯木場と呼ばれる場所に一旦ストックされます。
ここには3m、4m材と呼ばれる杉、桧がその長さに切り揃えられて置かれています。断面を見るとひとつひとつの木の個性がよりわかりやすく、育った環境も伝わります。
「樹は成長過程で曲がるので、途中までしか柱材がとれないものもあります。ここでは木が持つ癖を見ながら選別をして、製材工場に運びます。
また、育つ地域や山によっても年輪に特徴が出るのですが、我々の山では樹の密度をゆったりと保ち、年輪幅や芯の寄りのバラつきを少なくしています。
寒い地域は年輪幅の密度が狭く、九州などの温暖な地域は年輪幅が広い。宮崎県で知名度のある飫肥杉(おびすぎ)は油分を多く含んでいて軽くて加工しやすいので、船によく使われましたし、奈良県で知名度のある吉野杉は節が少なく素直な木目なので樽によく使われました。そのような地域ごとの特徴を鑑みて、和歌山県の紀州杉、紀州桧は、構造材に適しているとされていますね」
年輪から読み取れる「背」と「腹」も、改めて教えていただきました。
年輪が密集している方が「背」、広い方が「腹」。芯が寄っている方が「背」で、山を背負う形で生えていたのだと聞くと、丸太が山に生えていたころの情景が浮かんできます。
次々と運ばれてくる丸太を、フォークリフトで下ろしていく。大きなトラックから、鮮やかなハンドルさばきでゴロンゴロンと丸太を積み上げていく様子は、子供たちの記憶にも強く残ったでしょう。
丸太から製品へ
丸太の皮を剥き、部位ごとに切り出していく様子。
貯木場から製材工場までは、車で10分かからない距離。運ばれた丸太は皮を剥き、中心は柱材(芯持ち材)に、その周りは梁や桁といった横架材(芯去り材)、間柱材、床材、天井板、造作材、枠材など、使用部位に応じて木取りしていきます。
乾燥機と、乾燥を待つ木材たち。
その後は、乾燥機で人工乾燥を行います。
山長では、「高温蒸気式減圧乾燥機」を導入し、低い温度で乾燥させることにより、木材の劣化や内部割れ、変色を抑えながら、高い強度と低い含水率の木材乾燥を実現しています。
含水率の高い杉は3週間ほど、含水率の低い桧は1週間ほど乾燥。天然乾燥に近い色合いで、乾燥しにくい材内部の赤身部分もしっかりと乾燥できるのですが、この乾燥機はとても高額なのだそう。ランニングコストも一般的な乾燥機よりも必要なため、製材途中で出たおが屑や売り物にならない木材を燃やした蒸気を原動力にして、70%エネルギーをカットしているのだと言います。
端材は燃やして乾燥機の動力に。
工業製品と違い、それぞれに個性のある天然木材を、住宅の強度や耐久性に直結する構造材に使うには、検品と検査が何より重要。山長の構造材は、JAS認定を取得しており、厳しい検査を行ってその品質を担保しています。
乾燥を終えた構造材に割れや微妙な曲がりがないか、不具合はないかを、1本1本、人の目で検品し、モルダーと呼ばれるやすりがけをして表面を整えます。その後、木材中の水分量を測定する含水率測定器、木材の曲げ強度を測定するヤング係数測定器に通され、規定をクリアした材がJAS製品として用意されます。
最後に、その証明を木材に印字して、続いてプレカット工程に移ります。
写真左上:検品の様子 写真右上:含水率測定器
写真下:印字(SD20<含水率20%以下>、E110<ヤング係数E110>の105mm角4mの桧材であることがわかる)一般的な構造材の含水率は25%以下だが、JAS規格はさらに低い20%以下と決められている。また建物設計時の構造計算で、それぞれの構造材の必要ヤング係数が割り当てられているが、品質表示されていることで安心して使用することができる。
乾燥前の木材を持たせてもらった。同じ長さ、太さの木材でもひとつひとつ重さが異なり、水分量の違いが素人でもわかるほど。高い技術の感想と、乾燥後の水分量の計測の重要性が理解できる。
つくり手から住まい手へ
CAD室でプレカット加工前に木材を配置するオペレーションの様子を拝見。
建物における構造材の配置にあわせて、現場に納品する前に、接合部を予め加工することをプレカットと言います。我々つくり手と山長とは毎回2,3回打ち合わせを重ね、決まった図面に対して木材の適切な配置を決め、合意の上でプレカットを行っています。
接合部の形で木材を使う方向が決まるのですが、同じ品質の木材でも使用する方向によって耐久性が変わったり、室内側にあらわれてくる木目や節によって、暮らしの中での印象がずいぶん変わるため、木配りと呼ばれる木材を使う向きを決めるこの過程は、非常に重要。そうして決まった情報を、正確に加工現場に伝えることも重要で、一貫生産体制をとる山長の強みと言えます。
プレカット加工場の様子。加工に入る前にさらに人の目による検品を行う。節が抜ける可能性のあるものや、カミキリ虫などの虫食いがある木材はこの時点で避けられる。
プレカット加工は基本的に機械で行うが、場合によっては手彫りすることもある(写真右上)
最後に、出荷先の工務店名を手刷りで印字して完成(写真左下)
紫外線フィルムと段ボールで保護をして出荷する(写真右下)
天然木を使うということ
木を植え、成長しやすいように下草を掃い、定期的に枝打ちをして、間伐をして、できる限り真っすぐに育てて、節の少ない綺麗な木目になるように管理をして50年以上。2〜3世代に渡り手塩にかけて育てた構造材を、様々な職人の目と経験と、高精度の機械を使って、高い品質で出荷する。実際には割れや曲がり、規定通りの強度や含水率に収まらず、製品にならない木材もあり、家1棟に使われる木材は、生えている状態の樹で350本以上を使用しているそうです。
そこには、様々な人の手間がかけられ、長い時間と想いが繋がっています。工業製品と比べると非効率に思う部分もあるかもしれませんが、無垢材ならではの代えがたい心地よさがあり、またそれらを使うことで、育てて出荷する人々の生活も守ることになります。長い時間をかけて作り上げる無垢材は、使うことをやめると、山を管理する方がいなくなり、山が荒廃し、やがて地崩れや洪水などの災害に繋がります。林業は失われてはいけない業種です。
山長では、山や林業や職人技術を守るため、様々な投資と工夫をして、バラつきのある天然木の品質の安定を図り、林業から製材、プレカット加工までを一貫生産して製品精度と協力体制を高めて、美しい紀州材を安心して使えるよう企業努力を重ねています。
また、高齢化が懸念される業種にありながら、山でも製材所でも、働き手の年齢層が広く、若い方も多く見かけられたことも驚きでした。知識と技術が受け継がれ、今後も発展していくために、計画的な採用と育成にも力を入れる一方で、設備や組織体制で若い方でも働きやすい環境を整えているのだそう。
和歌山県下の小学校でも山長材を使っており、学生の社会見学も受け入れている山長には、それをきっかけに働きたいと思った当時の小学生が大人になり、今社員として入社した方が2名いらっしゃるのだとか。
そのような話も聞いて、参加者からは
「人を育てるのは大変だと思うが、想いや技術が受け継がれている様がとても気持ちがよかった」
「家を建てたときに、『木は生き物だから、使うのが楽しい』と大工さんが言っていたことが印象に残っている。それが、この一日で実感できた」
「普段は見えない部分に、こんなにも労力と気持ちがかけられていたことを知った。暮らしの中で見えない部分にも想いを馳せて、感謝して過ごしたいと思った」
といった温かな感想が次々と聞かれました。
住まいを支える柱や梁に対する見え方がさらに深まり、愛着が増したのであれば嬉しいです。ナルセノイエでは、今後も住まいのルーツを訪ねる機会を企画していきたいと思います。
住まいのルーツを訪ねて
~山長商店ツアー~
協力:株式会社山長商店
〒646-0011
和歌山県田辺市新庄町377
https://yamacho-net.co.jp/